三月議会での承認を経て、その奇怪な経緯から成立そのものが危ぶまれていた、ごみ焼却施設建設のための一部事務組合は解散となった。吉見町の荒川沿いに広がる農地の中に中部環境保全組合が運営する環境センターの煙突が目立つ。この荒川氾濫地域に再び「迷惑施設」を引き受けることは、環境センター建設をめぐって地元の住民が起こした裁判で「二度とこの地に同じ施設は建設しない」とする和解条項を破ることだった。
前吉見町長は二度目の施設建設を9市町村に誘い掛け、強引な手法で用地買収目前にまで牽引してきたものの敗退した。前町長の思惑を支えたのは県であり事務局であり、そして「遠くに建てるなら」と関心を寄せなかった9市町村の議員であり私たち住民一人ひとりである。
それと同時に問題の根底に横たわる国の「広域化」という、地方自治をないがしろにする政策に、今後どう対処していくのかということも問われている。
焼却炉建て替え時期とも重なり、各地で住民との覚書や協定を破ってのごみ処理施設建設という事例が頻発しています。「広域化ありき」は住民の自治する力を奪い、結局は巨大メーカーの言い値通りに管理と運営を「お任せ」することになります。本研究会での「検証」が、自治を取り戻すために日夜奮闘している方々に少しでも参考となれば、望外の喜びとするところです。
8月26日の東京新聞より引用
☆正副管理者会議が二十六日、同町で開かれた。付帯施設の運営費負担を巡る意見対立の溝は埋まらず、今後、組合を解散する方向で協議していくことが決まった。九市町村の将来の可燃ごみ処理計画は宙に浮くことになり、早急な善後策の検討が迫られることになった。
二時間十五分にわたった会議の後、取材に応じた宮崎町長は「各首長がそれぞれ議会への説明を行った上で、再度、正副管理者会議を開く」と述べた。(中里宏)☆
東京新聞が議会を取材し、10日付け埼玉版に掲載。
以下☆から☆まで引用です。
☆閉会間際に組合管理者を務める宮崎善雄・吉見町長が突然、付帯施設の運営費分担を巡る組合内の意見対立を理由に、管理者を辞任する意向を表明。建設予定地の首長の辞意表明という異例の事態で、二〇二三年度完成を目指す計画は、不透明さを増すことになった。 (中里宏)☆
例年2月と8月に開催されてきた組合議会ですが、付帯施設の運営主体と経費負担については、吉見町が「組合全体で」という主張を譲らないでいるため、もう進めるのは難しいという観測が飛んでいました。付帯施設の建設は「地元からの要望」を錦の御旗にしてきましたが、建設地の決定方法同様、その要望が出された経緯や施設建設検討の過程は開示されていません。
このように、当初から住民を排除した一方的な手法で始まったこの事業は、結局のところその排他性が仲間内の反発を買い、相互不信の種まきをしてきたと言えます。
副市町村長会議での『多数派』意見は、付帯施設建設は吉見町の地元対策であり恩恵を受けるのも吉見町民が主なのだから吉見町が費用を負担するべきだというものです。このように相互の利害調整ができず、理念的にも道義的にも破綻している広域化は持続するに値しません。つまり、管理者が変わったところで解決になるということは考えにくく、訴訟が続くマイナス面も考えると、この局面で事業を中止にすることが、これ以上の税金の無駄遣いを防ぐ懸命な方法です。
特に、ときがわ町を含む小川地区衛生組合の場合は、現行の焼却炉の改修という方法もあり、五輪を控えて資材・工賃が最も高騰している時期での建設計画は見合わせることが最善の策だと考えます。
開示された議事録からだけでも、町長就任当初から「現在地ありき」で次期焼却炉の建設を推進してきた軌跡が浮かび上がります。さる7月27日に開催された都市計画決定に伴う公聴会で公述人として陳述した内容は以下の通りです。
<公述内容>
今回の計画には、不平等、不透明、不自然など、否定的要素、疑惑ばかりがあります。これらの点に関しては本日多数の公述人が縷々述べてくださると思いますので、私は、この計画が持つ決定的瑕疵について、陳述したいと思います。
先ずは、「決定的瑕疵」と言う理由ですが、現在「追加」として出されている計画区域は裁判によってごみ処理施設は建設できないことになっている場所だからです。
現在の中部環境保全組合は昭和61年に裁判所の勧告に従い、この一帯には今後一切ごみ処理施設は新設も増設もしないという和解を、提訴側の住民と交わしました。
新井前管理者は和解違反だとする批判に対しては、「現在の資源循環組合は和解当事者である組合とは別ものだから和解を破っていることにはならない」と主張してきました。
しかし、その言動を追ってみると、平成17年の中部環境保全組合管理者就任直後からその地位を使って、「新施設は現在地で」と画策していた事実が浮かび上がってくるのです。ほぼ就任と同時に何かをきっかけとして、「ここに建てる」ことを目指すわけですが、その時点で現施設は稼動からほぼ20年を経過しており、新施設検討の段階に入っていたという背景は、ここで押さえておきたいと思います。
時間に限りがありますので、公文書でも確認できるいくつかの発言を時系列でご紹介し、その証左としたいと思います。
最初にご紹介するのは、川島町町長の弁明です。早くも平成20年、すでに「現在地ありき」で吉見町長から打診を受けたとしています。
その後、平成22年6月の川島町議会では、4月に広域への参加希望を出したことを問われ、当時の高田町長が「20年の秋ごろ、口頭での打診があった。吉見町の現施設のあるところへ建設されるであろうという想定の中で話している」と答弁しています。
このような「想定」での画策が奏功し、各自治体の広域参加表明が平成22年中に相次ぎます。
それを受けて、新井前管理者は年末の中部環境保全組合臨時会において「参加する自治体はここを建設地と想定している」と堂々と発言するに至っています。
ところが、驚くべきことに、この発言の時点では、建設地について住民への相談や情報提供は一切なされていないのです。臨時会では「新施設検討委員会」を設置は決めたものの、第1回会議は翌23年の1月ですから、それ以前のきわめて独善的な発言だということです。
この当時、新井前管理者は10市町村での枠組みを構想していたのですが、平成24年、行田市や鴻巣市は、こうした「吉見ありき」の枠組みに反発して離脱していきます。
その後現在の構成市町村の首長による連絡会議が同年11月26日開かれると、新井前管理者はとうとう「現在地付近と考えていただきたい」と建設地引き受けの太鼓判を押してしまいます。それを、東松山市長は「吉見でとの強い決意」と称賛で応じています。
こうした経緯があったにもかかわらず、翌平成25年、北本市も離脱します。その後、埼玉中部広域清掃協議会として「地元説明会」を開催していきますが、事務局はあくまでも「建設地は未定」という説明に終始し、「現在地ありき」を住民には隠し通すという姿勢を貫いていました。
平成26年になって、形式上、建設地の選定に入りますが、対象となる場所を抽出した理由も評価手順も開示されないまま進められてしまいます。
このように見てくると、組合管理者という地位を利用して、「現在地ありき」へと突き進んできたという事実が、否応なく浮かび上がってきます。
和解条項は判決と同等の効力があります。だからこそ、住民は30年以上もの間、「もうここには建たないんだから」と耐えてきました。その住民を最初から欺く考えで作り上げて来たのが、この都市計画です。
私たち構成自治体の住民は、何も知らされないまま、この違法性に加担させられ、住民どうし対立するように仕向けられてきました。ここまで強引に押し進めてきた理由はなんでしょうか。それによって、誰がどんな利益を得るのでしょうか。
最後に付け加えます。
前管理者は、先の町長選直後、この違法行為を批判した議員を名誉毀損で提訴しましたが、その請求は棄却されました。裁判官は「議会議員としての正当な活動の範囲内である」と理由を述べています。
議会政治とは、悪しき一人の人間が全体を動かすことを防ぐための仕組みです。しかしながら、前管理者は、長年町長の座にあることで、議会まで自分に従って当然という考えに陥っていたようです。
このように住民蔑視、議会蔑視の姿勢が根本あるこの計画ですから、不平等、不透明、不自然という批判が出てくるのは当然です。関係市町村の住民としては、このような住民への背信、自治への冒涜を長年見過ごしてきたことについては、忸怩たる思いがあります。
それを修正すべきだという住民や議員は当初監査請求を起こし、後に裁判に訴え、現在も係争中です。
本都市計画は、そもそもが「追加」として申請するに足る正当性すらないものなのです。
ごみ処理は住民の自治意識がなければ成り立ちません。吉見町は幸いにも、住民との信義を重んじる町長に変わりました。将来に禍根を残さないためにも、違法をただし、原点に戻すよう、現管理者および関係者に望みたいと思います。
以上で公述を終わりにいたします。ご清聴ありがとうございました。
組合議会事務局では、5月25日に組合で集めた地元住民から成る事業推進連絡会を開催。
趣旨からすれば公開が当然の会議であり、要綱にも「原則公開」をうたっているにもかかわらず、傍聴希望者は締め出されました。
各自治体の6月定例会を前に、「周辺施設」の具体化や管理運営について、地元の合意を取り付けておきたい考えでしょうが、住民参画を履き違え「ブラック化」しています。
中部環境保全組合の法的責任は続いています!
<「和解協定」のある土地に、またもや焼却場建設は違法行為です!>
●吉⾒町⻑が「中部環境保全組合」管理者として、地元の皆さんと交わした「和解協定」があります。
その第10 項は、現在の中部環境センター建設と引き換えに、⼆度とここには建てないとしています。
<第10 項、債務者は、吉見町飯島新田地区、同町江和井地区、同町荒子地区、同町大串地区及び川島町にごみ処理施設を新設または増設しない。>
●新井前町⻑は債務者として、「和解協定」に従って「中部資源循環組合」に別の土地を選ぶように働きかけをする義務がありました。
●ところが、前町⻑はこの義務を無視しただけでなく、「中部資源循環組合」の管理者としても「現在地に建設」を押し進めて来ました。これは 裁判所の判決を無視することになるので「違法行為」です。
<焼却場計画は住民の大きな負担と危険を無視しています!>
●加盟する市町村の住⺠、議会も批判
⽴地選定手順、周辺施設など、住⺠合意を避け、情報を隠し続けての広域化は、加盟自治体にとっても大きなリスクです。3 月議会で4町村の議会5人の議員が質問しました。
●事業費はまだまだ膨れ上がります。
この場所は水害、液状化、地下水の⾼濃度砒素などの自然条件、予定地の中の住宅移転費用など経費を押し上げるマイナス要因が揃っています。
自治体は「最小限の経費で最大の効果をあげる」義務がありますから、広域化の正当性はすでに崩れています。
●環境面・経済面でも無理な⽴地です。
すぐ隣には緑地公園があり、道路の向い側には県の衛生研究所もありますが影響は無視しています。
「道の駅」「苺街道」も影響を受けます。
<法を曲げて建てられた施設は、運営もブラックになります!>
●平成25年には「要望書」の書き換えも
署名集めの時の文書が組合に届く時には別のものになっている「ブラック」がありました。
「建設地決定」の経緯も明らかになっていません。すでに、十分「ブラック」なやり方で進んできています。
●土地買収に向う手続きが始まっています。
建設用地買収にはその前段階として「農振除外」、「農地転用」が必要ですが、その手順や地権者の
承諾を得るための合意形成は十分とは言えません。組合は個々に交渉を進めていく姿勢でいます。
●組合は、買収交渉はプロに委託するとしています。
その費⽤も私たちの税⾦です。仮に、その買収交渉人が個人の土地に勝手に⽴ち⼊ったりしたら、不法侵入で訴えることができます。
●「不法な建設だから渡さない」と断れます。
自分の意志を貫いて承諾書に署名をしないでいる方もいらっしゃいます。組合が和解を無視して進め
る姿勢を改めないなら、和解の債権者は裁判で違法性を争うとしていますから、建設はできません。
これ以上計画を進めるならば、吉見町以外に住む住民も、違法性に加担させられ不当な経費負担がのしかかってきます。
「吉見ありき」は住民意思の尊重や住民の最大限の幸福を追求するという行政の基本をおろそかにしています。「おかしい」という声を一緒に出し続けていきましょう。
作成:ときがわ・自治研究会
(比企郡ときがわ町番匠359-2)
代表:篠原 090-4438-4104
net-ten@saitama.nifty.jp
2018年5月吉日
平成30年2月26日
ごみ広域処理組合から脱退をという陳情書を
小川地区衛生組合管内の各議会宛に出しました。
比企郡市ほか9市町村で構成する中部資源循環組合では、現在新ごみ焼却施設建設計画を進めていますが、
これは法的にも道義的にも大きな問題を抱えています。
陳情の趣旨は「中部資源循環組合からの脱退を求める」です。
理由は次の3点に絞りました。
和解(判決と同等の効力)の条項に反しています。
実際に、現在でも地元飯島新田住民の7割が反対していますが、町は無視しています。
住民間に利害対立を招き関係住民を分断しています。
「余熱利用施設要望」の経緯が不透明で、吉見の地元住民でさえも知らされていません。
「地元要望」という場合の「地元」の定義を明文化したものはなく、「代表」の選出等に
関する規程・要綱等も存在しません。
税負担の公平性に反しています。
温水プールやレストランなどの周辺施設は遠方から利用できるものではなく、吉見町の
地元対策事業です。
小川地区衛生組合構成自治体は、いずれも一人当たりのごみ排出量が県63自治体中
50位以下です。広域化では排出縮減の努力が負担割合に反映されません。